1.20.2009

こころからの平穏を。

人生の歩み方、年齢の重ね方、人柄、顔つき、放つ雰囲気。
それらを全部ひっくるめて、師と呼びたいわたしの憧れの人、
ジェリー・ロペス。
彼の自伝「SURF REALIZATION」を手に入れた金曜日、
さっさと家へ帰り、コナビール片手に…
と言いたいところだが日本の冬の夜には寒すぎるので赤ワイン片手に
胸を踊らせながら、読みふけった。
翌日の朝も、目を覚ましてそのままベッドの中で読みふけった。
年表まで入れれば822ページの辞書より分厚いこの本を、
その日の夕方に読み終えた。
ずっと読んでいたい、そんな至福のひと時だった。

“サーフィンの神様”と称される、ジェリー。
サーファーでないわたしが、初めてジェリーを知ったのは
いつだっただろう。
彼の存在を知ったとき、わたしは一目惚れにも近い感情を抱いた。
もうただただ惹かれてしまう、そんな感じだった。
その感情は、今なお消えていない。

彼のサーフィンの実績や軌跡は、大枠でしか知らない。
でも、DVDや彼が特集された雑誌を繰り返し見てきた。

どうしてあんなに穏やかで、すっとしていて美しいのだろう。
なんて優しい顔をしているのだろう。
ジェリーの輝かしい軌跡よりも、彼の人柄に、わたしは心奪われた。

自分でない他の人間や母なる大自然へ、常に畏敬の念を抱く。
いつも次の波がベストだと思える、心の開いた状態でいることで、
新しいコトを永遠に学ぶ。
そして、忘れてならない、アロハ・スピリット。

ジェリーの心は、これらで満たされているように思う。
レジェンドとして世界中から尊敬の眼差しにさらされてきたのに、
彼にはおごりがない。名声に溺れない。
だから、自分にとっての最善が掴めるし、人生においても良い波に乗れる。
穏やかでいられるのはハワイだからだと思いたくなってしまうが、
彼はノースショアとマウイの家を売り払い、
現在はメインランド・オレゴン州の山間に家族と暮らしている。
ビーチまでは3時間のロング・ドライブ。
それでも、ジェリーの顔つきは変わっていないし、
相変わらず、すっと、している。

東京のような喧噪にまみれていると、
ジェリーのようなライフスタイル、心の保ち方は難しいと思ってしまう。
でも、環境のせいにしてはいけない。
心の置き方。自分との向き合い方。その覚悟。
それが、大切。
ジェリーは、19歳の頃からヨガを日課とし、サーフィンにも活かしてきた。
肉体的にだけでなく、精神的な影響が大きいという。
ヨガの哲学は、心の防具。
わたしがヨガを始めたきっかけは、ジェリーだった。
まだまだ初心者マークを付けていたいが、
確かにこんなわたしにも精神的な変化が少しあった。
ヨガを通して、心の余裕が、手に取るように理解できるようになったのだ。
それを教えてくれたという意味でも、ジェリーはわたしにとって、師。

写真で見る若き日のジェリーは、ワイルドでニコやかな好青年。
でも、断然、60歳を過ぎた今の顔がいい。
こんな風に年を重ね、こころの平穏を顔に刻みたい。
その秘訣、というか彼のサーフトリップ人生の一瞬一瞬が
鮮やかにこの本には記されている。
死の壁ともいえる荒々しい波と戯れてきた人生。
時に過酷で危うい経験を乗りこなしてきたからこその、あの顔つきなのだろうか。
ジェリーはいう。
“サーフィンは、人生の乗り方を教えてくれる”と。

わたしも、ジェリーのような顔つきになりたい。
いつも、こころに平穏を。
そして、Aloha.


迷いがあったとき、だれかに励ましてほしいときの
指針となる言葉やエピソードを…と思い、
付箋をしていたら、こんなことに………。
大切な言葉を読みたくなったときは、
素直に初めから全部読み直します。

装丁は、デザイナーの佐藤卓。
ご本人と同じように、優しいのに潔い。
さすが、美しいです。