『この世の外へ〜クラブ進駐軍』。
戦後の日本で、ジャズを生きがいにするジャズメン5人の話だ。
ジャズバンドメンバーには、村上淳、松岡俊介、そしてオダギリジョー。
メチャクチャだった時代に、夢を追いかけ、
かつて敵だったアメリカ進駐兵と音楽を通じて友情を芽生えさせる男たち。
はっきり言って、映画自体に思い入れはないし、
まぁまぁ…という感じだったが、
この映画で印象に刻まれたのは、村上淳演じたピアノ弾きの
ピアノだった。
つい先日、大橋トリオという人のアルバムを聴いて、
一瞬で気に入ってしまいプロフィールを見たとき。
「映画音楽を担当」という箇所を読んで、すぐにピンときた。
シックス・センスなぞまったくないのに(違うか)、
もしやあのときのあのピアノは…と5年前の引き出しが開いた気がした。
普段働かないわたしの勘は、このときばかりは見事に的中したのだが、
大橋トリオのソロアルバムは、とても嬉しい。
数年前の「THIS IS MUSIC」(写真上)を聴いて、
あぁピアノを弾く人の声だなぁとしみじみした。
楽器に触れている人の歌は、どこか含みがある。
ギターを弾く人の歌と、ピアノを弾く人の歌はやはり違う。
ピアノを弾く人の歌は、優しさと強さがある。
芯は強いんだけれど、それを優しさが覆っていて、だから表立つのは優しさ、
というような、そんな感じだ。
ピアノそのものが持つ力と存在感の強さを知っている人だけが持つ、
優しさと強さ。
とても嬉しい気持ちで満たされる。
大橋トリオ、といってもトリオではない。
大橋好規のソロ名義だ。
映画音楽を数多く手掛けてきただけあり、
彼は情景を歌う人。
とてもよく晴れてキラキラと眩しい景色もいいけれど、
雨の日に車の窓から見る都会の景色もいい。
彼の音楽を聴いていると、素直にあぁキレイな日だなと、思えてくる。
なんでもない日常に、そっと寄り添ってくれる音楽とは
こういう音楽のことをいうのだろう。
主張しすぎず、でも存在の面白さがある。
だから、一緒にいたいと思う。
恋人に想う気持ちと、同じかもしれない。
5月13日メジャーデビュー
「A BIRD」