5.29.2009

光をもとめて

太陽が恋しくなるような、お天気の日。
そんな日は部屋にこもって、映画『イン・ハー・シューズ』を観る。
どうもキャメロン・ディアス=ラブコメという印象が強いが、
これは違う。
これは、家族の関係、姉妹であり親友である絆、
そして自分らしく輝ける居場所を見つけるまでの物語。

若くスタイルもよくゴージャスなルックスの妹マギー。
定職につかずフラフラしたその日暮らしの日々を送っているが、
難読症という悩みを抱えている。
一方、姉ローズはフィラデルフィアで
弁護士として成功を収めているエリート。
でも、ルックスにコンプレックスを抱え、
履きもしないブランド靴に美しさをゆだねてクローゼットに並べている。
正反対のこの姉妹には、同じ哀しい過去がある。
繊細な精神の持ち主だった最愛の母親を亡くしているのだ。
近くに暮らす父親は再婚し、娘たちを愛しているけれど
再婚相手への遠慮もあって距離を置いている。

そんな中、冬の気候の厳しいフィラデルフィアで、
姉妹は大きな衝突を起こす。
行き場をなくしたマギーは、父親の書斎を漁っていたときに見つけた
祖母の手紙を思い出す。
そこにあった住所は、太陽の眩しいマイアミ。
マイアミへと辿り着いたマギーは、死んだと思っていた祖母の家へ電話する。
老人ホームを手伝いながら暖かい気候の中で暮らす祖母もまた、
自分の娘を失った哀しみを乗り越えてはいなかった。
マギーはお金のため、祖母の勧めで老人ホームで働くこととなる。
嫌々ながらの仕事だったが、元教授の老人との出会いから、
誰かのためになれる自分の存在を発見し、自分らしさを見つけていく。
そこへ、喧嘩中だったローズがマイアミを訪れる。

舞台がマイアミへと移った途端に、画面には光が溢れ出す。
そしてマギーが老人たちと心を通わせマイアミに馴染んでいく姿は、
とても輝いていてのびのびとしている。
本当は誰かのためになることで歓びを感じられる心を持っているマギー。
その優しい本能がマイアミで開花し、ローズとの絆を取り戻す。
ラスト、ローズの結婚式でマギーが贈るサプライズに、
「あぁ、姉のためにがんばったんだねぇ」という、
母親というか近所のおばさん目線で涙してしまう。
誰かのために必死に頑張れる人は、とっても美しい。

大切な人を”想う”、大切な気持ちがカタチにできるとき、
なによりもまず、大切な人を”想える”とき、
人はきっとキラキラとした雰囲気に包まれてキレイになれる。
それは、いくつになってもどんな人でも共通すること。
本編のラスト、キラキラした存在で、レゲエのリズムにノリながら
式場ガーデンへと向かうマギーの後ろ姿が微笑ましい。









『IN HER SHOES』

5.15.2009

拳をあげて、うたおう。

ずっと変わることのないアーティストもいる。
それは、エンターテイナーとして一つのスタイルだ。
オーディエンスの求めることを、追求し表現し続けるということ。
しかし、人間はだれだって成長する。
アーティストだって成長する。それが、表現になる。

今年は、洋楽アタリ年かもしれない。
ビッグネームのアーティストのリリースが多い。
その中でも、メチャクチャ期待してしまうのが、
GREEN DAY。
今日、ニューアルバムが世界同時発売となった。
タイトルは、「21st CENTURY BREAKDOWN」。
この時代を生きる私たちのための、一枚だ。

私はパンクキッズではなかったが、
やはりGREEN DAYは重要なバンドのひとつとして聴いてきた。
商業主義とか階級とか学歴とか、というよりこの社会への反骨が
根にあるのがパンク。
だから、当時はパンクリスナーからは批判もされた。
それは、彼らが“ポップ”だから。
とはいえ、彼らのメインストリーム並みに美しくてポップなメロディに
世界中のパンクキッズが虜になった。
今だって、10年以上前の彼らのアルバムを引っ張り出しても
そのメロディアスさに胸がキュンとなる。
パンクな精神を持つ者にとって、彼らの存在は無視できなくなった。
だって、GREEN DAYはパンクが根っこなのに、
思いっきり世界に受け入れられているのだから。
本心は、自分は自分であるまま、社会に受け入れられたいのだ、誰だって。
はみ出し者が、メインストリームをありのままに突っ走れるってことを、
彼らは証明してみせた。

4年前、GREEN DAYはすごいアルバムを出した。
『AMERICAN IDIOT』。
これは、製作中にアメリカがイラク戦争を始めたことへの怒りを元に作られた。
ブッシュ政権への批判を公言していた彼らだが、このアルバムには多くの人が
驚いたことだろう。
だって、あのGREEN DAYが、反戦を掲げて歌っているのだ。
いつの間にか、世界的パンクバンドは、社会派パンクバンドになった。

あの『AMERICAN IDIOT』は、最高傑作と評された。
でも、新作『21st CENTURY BREAKDOWN』は、
前作を超えるアルバムだと、わたしは思う。
全18曲。サウンドは、“THE GREEN DAY”という感じ。
キャッチーだし、一度聴けば合唱できてしまうポップさがある。
リフやリズムだって、特別なことはしていない。
(ただ、この3人は基礎がかなりしっかりしている)
それでも、こんなロックを待っていた!と拳をあげずにいられない。
今作は社会派の顔というより、今の時代を生きるとはどういうことかを
描いている。
混沌としていて、荒廃していて、不安だらけで、
それでも恋人と共に期待や希望もかすかに抱いている。
ラストの曲「SEE THE LIGHT」の、闇から光が射してくるようなサウンド、
そして「俺は光が見たいだけ」という言葉が、
すべてを物語っているように思う。
そう、光を見たい。

昔はアメリカの町にいそうな若者という風貌だったが、
最近、特にビリー・ジョー(Vo&G)の顔つきが、
すごくカッコ良くなった。
とってもイイ歳の重ね方をしているな、と思う。

最高傑作を乗り越えて、また最高傑作を生み出す
彼らのアーティスト魂に、今はただただ感服したい。






GREEN DAY
「21st CENTURY BREAKDOWN」
(邦題:21世紀のブレイクダウン)

5.08.2009

愛らしい、big girl.

22歳のとき。
海外ドラマ「SEX AND THE CITY」を初めて観て、
見事に惹き込まれた。
登場する彼女たちはわたしよりも15歳以上年上の設定のため、
親近感というより、こういう女性たちのように年齢を重ねる生き方も
あるのかぁ…という教訓を得たようだった。
それと同時に、年齢を重ねればもっと上手に生きられて、
恋愛も仕事もうまくこなせるようになるという甘い願望は、
キャリーたちを通して間違いだと教わった。
年齢を重ねても、泣くことはたくさんあるし、うまくいかないことだらけ。
girlは、いつまで経ってもbig girlなんだ。

今さらわたしがSATCの解説をする必要はないと思うので、
ここでは思いっきり省くことにする。
ドラマと劇場版のDVDを何度も何度も観て、文字通り擦り切れるまで観て、
ここまで月日が経った。
キャリーたちの存在は、わたしの20代の歩みに寄り添ってくれている。

SATC終了後、製作陣はANOTHER STORYとして、
「カシミアマフィア」というドラマをスタートさせた。
主演のルーシー・リューをはじめ、SATCと同じようにNYの女性4人の物語。
年齢もSATCとほぼ同じ頃。
スタイリストも同じパトリシア・フィールドが手掛けている。
親友のためなら、コネもお金も惜しみなく使う、“カシミアマフィア”たち。
しかし、なにかが違う。
違うのは当たり前だが、なんだか荒んだ印象を受けてしまうのだ。
女性4人の友情間に棘はないけれど(逆にSATCではあった友情喧嘩もない)
周囲の人との関係性に緊張感があって、信頼できる人がいないのだ。
SATCで登場したキュートで温かい歴代のボーイフレンズのような、
4人を支えてくれるゲイの友人のような、
または家族の一員となっているベビーシッターのような、
心からの関係を築ける人物がいない。
憎たらしい人が、たくさん登場する。
しかも、はじめから憎たらしい存在なのではなくて、
仕事での競争や離婚、恋愛が引き金となり、憎たらしくなっていく人が多い。
特にジュリエットの旦那なんて、NYまで行ってぶん殴ってやりたくなる。
それは、現実、リアルな人間関係だと言われればそれまでだが、
SATCでは嫌いになるような、思わず拳を握ってしまうような人はいなかった。
だから、心穏やかに観ていられたのだ。

キャリーたちは、自分のことはもちろんだが、
親友や家族、恋人、周囲の人のことを心から想い大切にしていた。
観ていて、その優しさがとても嬉しかった。
こちらの心も、自然とニコやかになった。
そんなbig girlが、とても愛らしい。