今夜の夕食は、ささっと和えたパスタと赤ワインにしよう。
バルサミコとオリーブオイルと塩をグリーンサラダに振りかけて。
そんな夜は、映画『ディナーラッシュ』をお供にしたい。
移民が創り上げた街・NY。
マンハッタンのトライベッカ地区は、レストランの激戦区だ。
NYには、イタリア系の人たちが多い。
普段は大雑把で大らかなのに、食には大雑把ながらうるさい人たち。
自分たちの文化、特に食文化に誇りを持っている。
あのDeau&DelucaはNY発祥だが、創始者のデルーカさんはイタリア系。
幼い頃から食べてきた本当に美味しい物をNYに、との想いでチーズ屋を始め
そこからスタートしたとは、知られた話。
さて、映画本編。
場所は、トライベッカにあるレストラン「ジジーノ」。
若手人気スターシェフ・ウードは、経営者である父親が引退して
「ジジーノ」が自分の店となることを願っている。
古風な父親は、息子が作る創作料理には興味がない。
むしろ、今は亡き妻のイタリア家庭料理が一番だと思っている。
ここ最近、「ジジーノ」を買い取りたいというギャングが接近。
そのギャングが「ジジーノ」の共同経営者を殺害するところから話が始まる。
様々なニューヨーカーが集う、ある晩の物語。
スタイリッシュなサスペンス…と紹介されていたりするが、
とんでもない。サスペンスなんて。
スタイリッシュは言葉通りだが、これは立派なヒューマンドラマであって、
NY物語であって、食いしん坊のための物語。
飾り気はなくカジュアルなんだけれど、くだけ過ぎていない、
いかにも本物のNYレストラン(五つ星とか高級レストランは表の顔)
という雰囲気の店で、狭い厨房の中作り出されるイタリアンが食べたくなる。
そして、こういうお店ではワインはボトルがいい。
ボトルをシェアしながら飲むのは、格別に楽しい気分になる。
おしゃべりも弾む。
軽快なjazzをBGMに、会話でガヤガヤしている店内は心地よい。
博識なバーテンダーとのおしゃべりもNYらしい。
こんな本編の風景を見ながら、自分のために作ったイタリアンと
気分で選んだワイングラスに赤ワインを注ぐ。
そんなとき、食の楽しみを感じられることを嬉しく思う。
調理は、シンプルでいい(ただ食材はいいものを)。
この映画があると、なんてことない料理も
スペシャルに美味しい今宵のご馳走になるから不思議だ。
さあさあ、今夜は早くおうちにかえろう。